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~羅生門~
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院長コラム
前回は、「胃の症状があるときには、胃内視鏡検査でしっかり病気の状態を把握することが大切です」というお話をしました。
今回はその続きとして、胃内視鏡(胃カメラ)だからこそ分かる、一見すると矛盾しているような事実についてお話ししたいと思います。
胃内視鏡検査では、現在の病気だけでなく、将来のリスクも含めて多くの情報を読み取ることができます。その中で、胃がんのリスクを判断するうえで最も分かりやすい指標のひとつが、ピロリ菌感染の有無です。
内視鏡医の立場から見ると、ピロリ菌感染の有無は、下図のように RAC(Regular Arrangement of Collecting Venules:規則正しい微細血管構造)がきれいに確認できるかどうかで、ほぼ判断することができます。胃角にRACがしっかり確認できる状態、いわゆるRAC陽性であれば、「ピロリ菌未感染の可能性が高く、胃がんになりにくい胃」と考えられ、これは患者さんにとって非常に喜ばしい所見です。

ところが、ここで少し**“羅生門”的な話**になります。
実は、このRACがきれいに見える胃では、逆流性食道炎(GERD)がしばしば合併してみられることがあります。
どういうことかと言うと、ピロリ菌がいない胃はダメージを受けておらず、いわば「元気な胃」であり
〇 胃がんのリスクは低い
▲ 一方で、胃酸がしっかり分泌されやすく、逆流症状は出やすい
という同じ内視鏡所見から、まったく異なる側面が見えてくるのです。

胃の世界では、「良い」「悪い」を一方向からだけで判断することはできません。
まさに 『羅生門』(芥川龍之介) や 『善悪の彼岸』(ニーチェ) のように、見る角度によって意味が変わるのが内視鏡診断です。
だからこそ、「症状」「内視鏡所見」「胃がんリスク」「胃酸・逆流の問題」を総合的に読み解くことが重要になります。
胃内視鏡検査は、単に病気を見つけるためだけの検査ではありません。
その人の胃の“性格”を知るための検査でもあります。
次回は、私なりの「胃の性格の読み解き方」についてお話ししたいと思います。
医療法人英知会「はらだ内科・内視鏡クリニック」
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