~予想屋~
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院長コラム
前回のコラムの最後に「新しい悩み」について触れました。
「薬が増えたのになぜ悩むの?」と思われるかもしれません。しかし実際には、薬が増えたからこその難しさがあるのです。
たとえば潰瘍性大腸炎の難治例では、複数の薬の中から「どの薬を、どの状態のときに、どの順番で使うか」という明確な基準(ガイドライン)が現時点では定められていません。胃がんや大腸がんのように「進行度に応じて内視鏡→手術→化学療法」と治療方針が整理されている病気とは違い、炎症性腸疾患ではその基準がまだ発展途上なのです。

薬を選ぶときにまず重視されるのは「有効性」です。ただし、その有効性にも幅があります。ある薬の有効率が75%とされていても、その薬が効かない患者さんもいますし、一方で有効率50%の薬が驚くほどよく効くケースもあります。さらに「症状は改善したが、炎症のくすぶりが残っている」といった不完全な改善にとどまることも少なくありません。
もし「この患者さんにはこの薬が一番効く!」と事前に予想できれば理想的ですが、残念ながら現時点では決定打となる方法はありません。ただし希望もあります。

☑尿検査(PGE-MUM)で免疫の状態を調べ、その結果によって効きやすい薬の系統を予測できるという報告
☑アトピーなどのアレルギー体質を持つ方では、共通のメカニズムを抑える薬が有効であるという報告
☑皮膚や関節症状などについてはすでに解明している特定の免疫を抑える薬が有効であるという研究報告
☑炎症のある腸の粘膜組織を詳しく調べることで、効果が見込まれる薬を選びやすくなるという研究成果
こうした新しい知見が少しずつ積み重ねられています。だからこそ、医師としては常に最新の研究を学び、患者さん一人ひとりに最適な治療を治療できる予想屋になれるよう、自らの経験と知識を更新し続けることが欠かせません。
それでも悩みはつきず、次回に続きます・・・・
医療法人英知会「原田内科胃腸科医院」
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