旧診療所の解体工事もいよいよ最終段階となり、残すは駐車場整備と外装工事のみです。新しいクリニックの姿が徐々に現れ、完成が近づいていることを実感しています。
さて、私の専門分野のひとつである炎症性腸疾患(IBD:潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病)に関する学会が札幌で開催されました。当科からも演題を発表いたしましたが、今回は同僚の先生に発表をお願いし、私は現地に赴かずWebで参加しました。真夏の札幌に直接出向けなかったのは残念でしたが、自宅や職場から学会に参加できるのは、まさに現代の便利さを実感させられる体験でした。
さて、今回のテーマは炎症性腸疾患(IBD)に関わる少し専門的なお話です。潰瘍性大腸炎やクローン病、腸管ベーチェット病といった病気では、活動性が強い時には下痢や血便、腹痛といった症状が現れます。しかし、軽症になると症状がほとんどなくても腸の中で炎症がくすぶっている場合があります。この“くすぶり”を見逃すと再燃につながりやすいため、症状がないからといって安心してはいけません。
そこで大切になるのが「サロゲート・マーカー」です。なにそれ?と思われる方が多いと思いますが、簡単にいうと“代わりの目安”です。これまでは血液検査、たとえばCRPや最近注目されるLRGといった数値で炎症の有無を推測してきました。実際、皆さんも診察時に「CRPが低いから大丈夫です」と説明を受けられた経験があるかもしれません。
しかし、学会全体を通じて印象的だったのは、便に含まれる炎症マーカーがより信頼できるサロゲート・マーカーとして注目されている点です。血液よりも腸の状態を直接反映しやすいため、より正確に“炎症のくすぶり”をとらえることができるのです。
次回は、この便のマーカーが今後どのように臨床に活用されていくか、当クリニックでの展望も交えてお話ししたいと思います
医療法人英知会「原田内科胃腸科医院」
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