旧診療所の解体工事も終盤で、まだ20台分の駐車場と外装工事が残っていますが、新クリニックの前面の全貌がみえてきました。
さて、前回のコラムでは「次の胃カメラ(胃内視鏡検査/上部内視鏡検査)を1年後に受けた方がいい理由」を、主に「胃がん」の観点からお話しました。今回は少し視点を変えて、「胃がん以外」の病気についても触れながら、胃がん検診の大切さをお伝えしたいと思います。
まず「バレット食道」という病気をご存じでしょうか。胃酸の逆流が長く続くと、食道の粘膜が胃や腸に似た性質に変わってしまうことがあり、これを「バレット食道」と呼びます。バレット食道自体はがんではありませんが、時間が経つにつれ「バレット腺癌」という食道がんに進むことがあります。
このバレット腺癌は欧米では食道がんの多くを占め、日本でも徐々に増えてきています。私自身、ここ数年で明らかにその患者さんが増えていると実感しています。その背景には「ピロリ菌の減少」があります。ピロリ菌に感染していると胃酸が少なくなる傾向にありますが、除菌などでピロリ菌がいなくなると胃酸が元気に分泌されるため、逆流が起こりやすくなるのです。
もう一つ注目されているのが「十二指腸がん」です。これもピロリ菌の減少と胃酸の増加が関係しています。胃酸の刺激から十二指腸を守るために胃に似た組織ができ、そこから腫瘍が発生することがあります。実は私自身、十数年前に非常に珍しい症例を学会誌(原田英ら 胃と腸 2016年)に報告しましたが、今では決して珍しくなくなり、学会でも多く取り上げられるようになっています。
「バレット食道癌」も「十二指腸癌」も少しずつ増えてきています。しかし、こうした病気のリスクがある方にとって「次回の胃カメラは2年後で大丈夫」と言い切れるのかは、まだはっきりしていません。だからこそ「1年後に受けておいた方が安心」という考え方もあるのです。
医療法人英知会「原田内科胃腸科医院」
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