こんにちは。
先週末は、第134回消化器内視鏡学会中国支部会に参加してきました。今回は山口での開催ということで、移動の負担も少なく少しホッとしました。コメンテーターや評議員会の出席、後輩の先生の発表指導など、さまざまな立場で関わらせていただき、とても充実した時間となりました。
会場では、「薬剤による副作用」に関する演題も多く見られ、あらためて“ポリファーマシー”の問題について深く考えさせられました。
「ポリファーマシー」という言葉をご存じでしょうか?
これは、一人の患者さんが5種類、10種類と多くの薬を同時に服用している状態のことを指します。特に高齢の方に多く見られ、いまや大きな医療課題のひとつです。
たとえば、こんなケースがあります。
78歳のAさんは、便秘症・高血圧・糖尿病・高コレステロール血症・骨粗しょう症のため、複数の診療科にかかっていました。受診のたびに薬が追加され、いつの間にか朝・昼・夕・寝る前に10種類以上の薬を飲む生活に。最近は全身のだるさや食欲低下が続き、ある日「なかなか目が覚めない」とのことで病院を受診。検査の結果、便を柔らかくする薬と骨を強くするビタミンの影響で、血中のカルシウム値が上昇しすぎていたこと(高カルシウム血症)が判明しました。
その背景には、複数の病気に対する治療や、複数の医療機関・診療科を受診していること、そしてそれぞれの専門医の判断が複雑に絡み合っている現実があります。一つの薬を中止することで、別の症状が悪化してしまう可能性もあり、安易に減らすわけにはいきません。さらに、患者さんご自身が「薬が減ると不安」「ずっと飲んできたからやめたくない」と感じることも珍しくありません。つまり、病気だけでなく、患者さんの気持ちや生活背景も含めて、全体のバランスを見ながら調整することが求められます。
私自身も、こうした課題にどう向き合うかを日々の診療で意識しています。その取り組みについては、次回のコラムでお話しできればと思います。
医療法人英知会「原田内科胃腸科医院」
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